証券化と因果相関
不動産の証券化に関する仕事がくるかもしれない。
サブプライムのときに思ってたことをちょっと計算してみた。
デフォルト率の高い住宅ローンでも、証券化、信用リスクの分割によって高い格付けが得られる。
でも、それってどこまで、個々のローンがデフォルトすることの因果関係、相関関係を見込んでいるのだろうか。
見込む数字の影響って大きいんじゃないかと。
個々のローンのデフォルト率が独立な場合と、景気の状態によって影響を受ける場合を考え、それぞれの条件でのデフォルト数の発生確率を比較する。
条件
共通設定
- サンプル数n(プールする住宅ローンの数):10
- (平均)デフォルト率:20%
- 景気の状態は4パターン(最悪、悪い、良い、最良)を考える
- 景気の4パターンはそれぞれ1/4の確率で発生
- 個々の住宅ローンに対して共通の景気のパターンが決定された後に、個々のローンがデフォルトしたか判定される
モデルA
- 個々のローンのデフォルト率は完全に独立
- 景気の影響なし(デフォルト率pは一律20%)
モデルB
- 個々のローンのデフォルト率は景気要因で影響を受け、相関がある。
- 景気の影響によるデフォルト率pが変化(平均デフォルト率20%)
- 最悪:40%
- 悪い:20%
- 良い:12%
- 最良:8%
モデルC
- 個々のローンのデフォルト率は景気要因で大きく影響を受け、相関がある。
- 景気の影響によるデフォルト率pが変化(平均デフォルト率20%)
- 最悪:56%
- 悪い:12%
- 良い:8%
- 最良:4%
計算結果
計算式:nCr×(p^n)×( (1-p)^(n-r) )
デフォルト数r | モデルA | モデルB | モデルC |
---|---|---|---|
0 | 10.74% | 20.66% | 34.45% |
1 | 26.84% | 26.66% | 25.95% |
2 | 30.20% | 20.09% | 11.32% |
3 | 20.13% | 13.38% | 4.80% |
4 | 8.81% | 9.11% | 4.39% |
5 | 2.64% | 5.77% | 5.82% |
6 | 0.55% | 2.93% | 6.08% |
7 | 0.08% | 1.08% | 4.41% |
8 | 0.01% | 0.27% | 2.11% |
9 | 0.00% | 0.04% | 0.60% |
10 | 0.00% | 0.00% | 0.08% |
グラフは見づらいが、青がモデルA、赤がB、黄がCとなっている。
計算結果を見ると、それぞれのモデルのデフォルト数の期待値は同じであるのにもかかわらず、デフォルト数の発生率に大きくぶれがあることがわかる。
景気の影響が強く出るように設定したものほど、まとまって多くの住宅ローンがデフォルトする確率が高くなっており、その代わりに、デフォルトする住宅ローンの数が0になる確率も高くなっている。
考察
ここで、証券化によりリスクを分割する方法を考える。
住宅ローンをプールして、信用リスクを軽減する方法として、利回りを低く設定する代わりに、優先返済の条件をつけることがある。
例えば、個々の住宅ローンを同額とし、優先返済と劣後返済の二つに分けてみる。
モデルA(個々のローンは独立)の場合は6つ以上の住宅ローンがデフォルトする確率が、1%未満(0.64%)となっており、リスクを分割することで、返済が確保される確率がとても高くなっている。
しかし、景気の影響を考えた、モデルB、モデルCでは6つ以上デフォルトする確率が高くなっており(4.33%、13.27%)、予定通りの返済が確保されない確率が大幅に高くなっている。
このように、個々の住宅ローンの相関性を変化させることで、大きく安全性が変わるということがわかった。つまり、相関性を見誤ると、安全性に大きく影響を与えるといえるだろう。
また時間があるときに、補足、再証券化について考えたいと思います。